特殊災害とは放射性物質、生物剤、化学剤などの漏洩、飛散、流出による災害、いわゆるNBC災害を指します。これらの災害に対応する資機材を積載した「特殊災害対応自動車」は特別区が連合して維持する消防および指定都市に1台を備えなければなりません。災害の危険性の高い地域が指定都市として体制が構築されることにより、国民の安心へとつながっています。
この「特殊災害対応自動車」は一般の毒劇物災害やNBC災害に対応する専用資機材を備えています。また、隊員の安全確保と迅速な救助活動のために、汚染された外気が内部に入ることがない陽圧構造となっていることが最大の特長です。この「特殊災害対応自動車」は汚染された外気を特殊フィルターで浄化してから分析室に送り込みます。このことにより、隊員は災害現場に直接乗り付け、質量分析装置や赤外線分光分析装置によって収集分析を行い、有害物質をいち早く特定して的確に危険物回収活動や救急活動を開始できます。
モリタの「特殊災害対応自動車」は、車両左側に特殊フィルター付装備が設置されています。この装置は切替式の2つのフィルターで、フィルターを交換することで何時間でも継続して稼動することができます。陽圧構造は陽圧室に限られますが、陽圧室の排気が運転室から一方的に外部に排出されるため、運転室内も外気の流入を防ぎ、陽圧状態が保たれる構造になっています。移動時には、フロント部分にドライバーと隊長が乗車、5名の隊員は後部の陽圧室のシートに乗車します。陽圧室は分析室として使用され、車両左側の出入口と運転席をつなぐ小さな扉で仕切られ、ポリカーボネイト製の大きな窓が右側に2ヶ所、左側に1ヶ所設けられています。そして、陽圧室内には大型シート4脚と折畳式シート1脚が設置されています。緊急消防援助隊としての出動もありえるこの「特殊災害対応自動車」は遠距離移動の可能性も視野に入れて、隊員の疲労防止にも効果があります。
また、モリタの「特殊災害対応自動車」には気体を分析する「ガスクロマトグラフ質量分析装置」と液体固体を分析する「赤外線分光分析装置」が装備されています。ガスクロマトグラフ質量分析装置は、後ろ向きに備え付けられた分析用テーブルに設置され、隊員が採取したサンプルを車両右側の分析用ガス吸引口を通じて取り入れ、物質を特定します。赤外線分光分析装置は、本体を現場に持ち出し直接サンプルを採取し、その場で分析します。分析室のパソコンとは無線LANでつながり、陽圧室内で確認できます。
陽圧式化学防護服と測定・分析機材を収納するラックはスライド式を採用し、作業効率を向上させています。一段高い位置にある後部収納庫は収納式のアルミステップでアクセスできます。